研究概要
1. 研究の背景
心房細動は頻度の高い不整脈のひとつであり、世界的には75歳以上の人口の10%を含む約550万人に発症しているといわれている。日本における心房細動有病率は2005年時点で0.56%(約72万人)との報告があり、高齢化に伴い、2050年には1%を超えるとの試算もされている。すでに超高齢化社会を迎えた我が国では、本疾患に対する治療・予防法の確立は喫緊の課題である。
心房細動による心原性脳塞栓症の予防では、抗凝固薬による薬物療法が第一選択の治療法として推奨されている。しかし、出血リスクが高い等の理由により長期間抗凝固療法を実施できない患者も存在する。近年海外において、このような患者対し、経皮的に塞栓源となる左心耳を閉鎖する方法が開発され、わが国でも2019年に保険償還された。その安全性・有効性に関しては、薬物治療との比較を行ったPROTECT AFあるいはPREVAIL試験などの結果をもとに、海外では一定の評価が得られている。
本治療法をわが国の患者に安全かつ有効に提供するためには、慎重な適応検討と安全かつ効果的な施術の実施が可能な施設において実施すると同時に、そのデータを蓄積して、わが国における本治療法の位置づけを確立していくプロセスが必要と考えられる。そこで、2019年からのわが国における本治療法の保険診療下での実施開始に先立ち、日本循環器学会は、日本心エコー図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心臓血管外科学会、日本心臓病学会、日本脳卒中学会、日本不整脈心電学会と共同で本治療法の適応基準、実施施設基準を策定し、その中で、本治療を施行した患者の全例登録を実施施設となるための必要条件とした。
2. 研究の目的
塞栓症リスクが高いにもかかわらず長期的抗凝固療法を行うことができない非弁膜症性心房細動患者に対する、経皮的左心耳閉鎖術の安全性モニタリングを含む実態調査を目的とする。
3. 研究の対象患者および方法
経皮的左心耳閉鎖術を実施した非弁膜症性心房細動患者を対象に、以下の項目を症例登録システムへ登録する。
4. 収集項目とスケジュール
患者背景、既往歴、死亡を含む臨床転帰や心不全重症度、心エコーなど
評価項目/時期 | ベースライン | 手術日 | 退院時 | 手術日より45日後 | 手術日より6か月後 | 手術日より1年後 | 手術日より2年後 | 手術日より3年後 | 調査終了時 |
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基本情報 | 〇 | ||||||||
選択・除外基準 | 〇 | ||||||||
既往歴・心エコー等 | 〇 | ||||||||
mRS | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
手術日 | 〇 | ||||||||
退院時情報 | 〇 | ||||||||
来院情報 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
薬剤ログ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
退院後経食道心エコー検査 | 〇 | △ | 〇 | △ | △ | ||||
調査終了 | 〇 | ||||||||
有害事象 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
機器の不具合 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
5. 予定症例数
研究期間内における全例調査
6. 研究期間
症例登録期間:
倫理審査委員会承認日~2029年3月31日。ただし、延長する可能性がある。
追跡期間:
症例登録終了~2032年3月31日。
7. 研究組織、研究責任者およびデータセンター責任者
主導学会:
一般社団法人 日本循環器学会
研究責任者:
平田 健一 日本循環器学会代表理事
(神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学 教授)
データセンター責任者:
宮本 恵宏 (国立循環器病研究センター)